再生可能エネルギーのメリットは、温室効果ガスを出さず、災害時の備えや自給率アップに役立つ点です。一方で、デメリットとして天候による発電の不安定さや高いコスト、騒音などの地域トラブルが課題として立ちはだかります。
2025年現在、蓄電池の研究開発によって貯められる電気が増え、ペロブスカイトという次世代太陽光パネルの技術革新が進んでいます。
地域との対話により共生する工夫も広がり、課題の克服に向けた動きも加速しています。
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現役WEBディレクター・デザイナー/Grid Tips編集長
ピヨまる
2021年から、再生可能エネルギーに関わるLPや広告・紹介動画を制作して知見を養う。本コラムの立ち上げから更新までを一人で行っている。
再生可能エネルギー【3つのメリット】
地球にやさしく、枯渇しないエネルギー
再生可能エネルギーの最大の特長は、「使ってもなくならない」 という点です。石油や石炭などの化石燃料が、あと数十年から百数十年で枯渇すると予測されているのに対し、再エネは地球が存在する限り、半永久的に利用し続けることが可能です。
さらに、発電の過程で地球温暖化の主な原因である温室効果ガス(二酸化炭素)をほとんど排出しないことも、非常に重要なメリットです。
エネルギーの地産地消
現在の日本は、エネルギー源となる化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。化石燃料は、国際情勢が変化するとエネルギーの価格と供給が不安定になるという「地政学的リスク」を常に抱えています。
その点、太陽の光や風、地下の熱などを利用する再生可能エネルギーは、国内でエネルギーを生産することが可能です。これにより、エネルギーを自給できる割合である「エネルギー自給率」を高めることができます。
災害などの「もしも」の時に役立つ
地震や台風などの自然災害が多い日本では、太陽光発電に代表される再生可能エネルギーが、災害発生時に大きな力を発揮します。
自宅の屋根や地域の避難所となる公共施設に太陽光発電と蓄電池を設置しておけば、非常用の電源として電気を使い続けることができます。このように、各地に分散して設置できる再エネは、災害に強い社会を作るための「BCP対策(事業継続計画)」としても非常に有効です。
再生可能エネルギーのデメリット
再生可能エネルギーは多くのメリットを持つ一方で、完璧なエネルギーというわけではありません。普及を進める上で乗り越えなければならない、いくつかの大きな課題も存在します。
発電量が天候によって不安定になる
1太陽光発電
太陽の光をエネルギーに変換するので、発電は昼の間だけとなります。また雨や曇りの日、高層ビルなどの遮蔽物で日光が遮られると発電量が大きく減少するという課題があります。
2風力発電
風が吹いている時しか発電できず、風が止んだり弱まったりすると、発電は止まってしまいます。
3水力発電
大規模なダムの貯水池などでは、水量を調節できるため天候による短期的な影響は少ないです。しかし、近年では不安定な天候による環境変化によって、安定した発電の維持が困難な時期もあります。
導入するためのコストが高い
1技術的な課題
太陽光発電の導入・発電コスト(LCOE)は年々低下しているものの、蓄電池を含めたシステム全体のコストは依然として課題です。
2継続的な設備投資
天候による出力変動を補うため、蓄電池や調整用電源を確保する必要があります。大規模発電を行う場合、平坦な地形を確保して送電網を増強するなどの「システムコスト」が追加で発生する場合もあります。
地域社会との間で問題が起きることがある
再生可能エネルギーの発電施設は、用地の特性から住宅地の近くに作られることも多いです。このため、地域社会との間で様々な軋轢や問題が起きることがあり、最近では「社会的受容性」の課題と呼ばれることもあります。
1景観の問題
いわゆるメガソーラー発電所を建設する時などに、機器設置のために山の木を大規模に伐採することで、美しい自然の景色が損なわれるといった問題が発生する場合があります。
2騒音の問題
特に陸上風力発電では、風車が回転する際の「音が気になる」という住民からの懸念が寄せられることがあります。
3産業との競合
地熱発電では、温泉の「枯渇リスク」が観光業から特に不安視されています。大規模な掘削や熱水の採取により温泉の湧出量が減少したり、泉温が低下したりするといった懸念があります。
洋上風力発電では、設備だけでなく目に見えない音や電磁波が生態系に与える影響が懸念事項として挙げられます。風車の設置や海底ケーブルの敷設により、一時的な漁場の制限に加え、稼働後の騒音が海洋生物へどう作用するか、現在も国内外で継続的な調査・モニタリングが行われています。
再エネのデメリットを克服するアイデアと技術
電気を「ためて、つなぐ」方法
1蓄電池の技術革新
大容量の「蓄電池」があれば、日中に発電しすぎた電気を貯めておくことができます。余剰分の電気は、夜間や天気が悪い日の電源として使用できます。太陽光発電用の充電池は、家庭用の小型のものから電力システム全体を支える大規模なものまで、最も積極的に開発が進んでいる分野です。
2水素燃料の活用
太陽光や風力で発電し、余った電気を使って水を電気分解し、エネルギー源となる「水素」を作り出します。水素は、気体や液体として長期間大量に貯蔵することが可能で、必要な時に燃料として発電したり、車を動かしたりできます。
ただし、貯蔵や輸送の過程でエネルギーロスが大きいため、実用化に向けたコスト低減が課題となっています。
3スマートグリッドで電力を融通
スマートグリッド(スマートコミュニティ)とは、変動しやすい再生可能エネルギーを街全体で管理し、余った電気を捨てずに融通し合うという特徴があります。ブロックチェーン技術等を用いて誰がどれだけ電気を提供したかを厳密に記録し、対価やポイントを正しく支払うことで公平性を保ち、災害に強く地球に優しい社会を実現する取り組みとして期待されています。
コストを下げるための工夫
1入札制度の導入と売電制度の見直し
従来のFIT制度では、普及とともに国民への負担が増大し、いわゆる「再エネ賦課金」が問題視されていました。そこで、2017年からは入札で売電価格を決める制度が導入されました。この「再生可能エネルギー電気特措法による入札制度」の利用によって、電気購入者は安価な発電を提供する事業者を選ぶことができ、市場全体のコストダウンにもつながっています。
また、一定規模以上の電源は市場価格に連動したFIP制度へ移行し、電力市場への統合を促すことで、コスト競争力の強化と自立化が進められています。
2次世代技術「ペロブスカイト太陽電池」の実用化
日本発の技術である「ペロブスカイト太陽電池」は、従来のシリコン系パネルよりも軽量で柔軟性があり、これまで設置が難しかったビルの壁面や窓、耐荷重の低い屋根などにも導入可能です。
ペロブスカイト太陽電池が普及すれば、都市部での「自家発電自家消費」が促進され、距離で電力が減衰する「送電ロス」や系統コストの抑制にもつながると期待されています。
【事例】地域社会との共存
1熊本県小国町(わいた温泉郷)の地熱発電
地熱発電の「もと」となる温泉地では、熱源の取り合いや景観への懸念から開発が難航しがちです。しかしこの事例では、住民全30戸が出資し、地域主体で発電所を立ち上げました。
この「わいた地熱発電所」の取り組みでは、外部企業主導ではなく、地域自身が運営に関与することで売電収益を地域に還元する、「地域密着型」の共存モデルを実現しています。
2秋田県能代(のしろ)市の洋上風力発電
秋田県能代市は風況の良さから、国内有数の風力発電の適地として再生可能エネルギー事業が進められています。しかし、事業開始当初は漁場の喪失を懸念する漁師との対立が課題でした。
この課題に対し、国や自治体が主導する協議会を通じて徹底した対話が重ねられ、風車の基礎を人工魚礁として活用化する工夫や、漁業振興基金の創設で共生を実現しています。
この事業により地元雇用が創出されたほか、関連企業の進出や視察者の増加による宿泊・飲食業の活性化も進み、再生可能エネルギーが地域経済を支える地方創生のモデルケースとなっています。