一般的に、再生可能エネルギーとは「自然界に常に存在し、利用しても枯渇することのないエネルギー」となります。
現在、日本国内の再生可能エネルギーで主に使用されているは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5種類です。
これらが利用される主な理由は、地球温暖化対策とエネルギー自給率の向上です。火力発電に代表される化石燃料は、温室効果ガスの排出や資源枯渇のリスクもありますが、再エネはCO2を出さず、国内で永続的に確保できます。エネルギー安全保障の観点から不可欠な選択とされています。
この記事を書いた人

現役WEBディレクター・デザイナー/Grid Tips編集長
ピヨまる
2021年から、再生可能エネルギーに関わるLPや広告・紹介動画を制作して知見を養う。本コラムの立ち上げから更新までを一人で行っている。
再生可能エネルギーの必要性
現代社会が再生可能エネルギーへの転換を急ぐ理由は、単純にエネルギーの選択肢を増やすためだけではありません。再生可能エネルギー利用の促進は、私たちが直面する地球規模の課題を解決し、持続可能な未来を築くために必然的な選択となりました。代表的な理由は以下の通りです。
地球温暖化対策
ガソリンに代表される化石燃料の燃焼は、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスを大気中に排出し、地球温暖化を加速させる最大の要因です。これに対し、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーは、発電の過程でCO2を排出しません。気候変動による異常気象が世界各地で深刻化する中、再生可能エネルギーは温室効果ガスの排出を極力抑えることができるため、脱炭素社会を実現するための切り札と言えます。
エネルギーの安定供給と自給率向上
資源に乏しい日本は、現在エネルギー供給の大部分を海外からの化石燃料輸入に依存しています。その結果、国内のエネルギー自給率は2018年時点で11.8%と他の欧米先進諸国と比べても低く、多くは政情が不安定な地域に偏在しています。この構造は、国際情勢の変動がエネルギー価格の高騰や供給不安に直結する地政学的リスクを常に抱えています。国内の太陽光、風、水、地熱といった自然資源を活用する再生可能エネルギーは、エネルギー自給率を高め、海外への依存度を低減させることで、日本のエネルギー安全保障に大きく貢献します。
資源枯渇への対応
石油、天然ガス、石炭といった化石燃料は、地球が数億年かけて生成した有限の資源です。現在の消費ペースが続けば、石油と天然ガスは約50年、石炭も約130年で枯渇すると予測されています。未来の世代にエネルギー資源を残し、社会の持続可能性を確保するためには、半永久的に利用可能なエネルギー源への転換が不可欠です。太陽光や風力は、地球が存在する限り枯渇することのないエネルギー源であり、持続可能な社会を支えるための基盤となります。
これらの理由から、再生可能エネルギーへの移行は、環境、経済、安全保障の全てにおいて、私たちの未来にとって極めて重要な意味を持つのです。では、具体的にどのような再生可能エネルギーが活用されているのでしょうか。
【まるわかり解説】現在活用されている再生可能エネルギーの特徴
現在、私たちのエネルギー供給を支える再生可能エネルギーには、多様な種類とその特徴があります。日本において現在使用されている主な再生可能エネルギーには、以下の5つがあります。
太陽光発電
1発電の仕組み
太陽光のエネルギーを直接電気に変換する発電方式です。シリコン半導体などで作られたソーラーパネルの太陽電池に、太陽光を当てることで発電を可能にします。
2特徴
マンションなどの住宅の屋根や駐車場、耕作放棄地などの遊休地まで、大小さまざまなスペースに設置できる柔軟性が最大の長所です。一方で、夜間は発電できず、天候や日照時間によって発電量が大きく変動するという短所もあります。日本では導入が最も進んでいる再生可能エネルギーであり、今後も主力電源の一つとして期待されています。
3課題
メガソーラーのような大規模開発は、土地利用の課題と直結します。日本国内の平地は、その多くが農地や宅地として利用されています。この地理的制約から、大規模な太陽光発電施設の設置は、森林伐採や生態系への影響、景観問題を引き起こすことがあり、住民の反対運動など社会問題にもなっています。
4持続可能性
軽量で柔軟な日本発の次世代技術「ペロブスカイト太陽電池」の研究が進められており、ビルやマンションの窓など、従来のパネルでは設置困難な場所への導入が期待されています。
他にも、蓄電池の高品質化やコスト低減といった技術革新、IoTで電力を需給調整するVPP(仮想発電所)技術の開発も積極的に進められています。
風力発電
1発電の仕組み
風の力で巨大な風車のブレードを回転させ、その回転運動を発電機の電気エネルギーに変換する方式です。
2特徴
一般的に、陸上に設置される「陸上風力」と海に設置される「洋上風力」があります。特に四方を海に囲まれた日本では、より強く安定した風が吹く洋上風力の利用が主流です。
3課題
太陽光発電と同様に、発電量は風の状況に左右されます。陸上では、風車の回転に伴う騒音や、野鳥がブレードに衝突するバードストライクが問題となることがあります。洋上では、漁業区域との調整や海洋生態系への影響評価など、漁業者をはじめとする地域関係者との共存が重要な課題となります。
4持続可能性
浮体式洋上風力発電や全方位の風から発電を可能とするサボニウス式風車など、新技術の登場でより多くの場所での導入が可能になりつつあります。
水力発電
1発電の仕組み
ダムに貯めた水を高所から落下させる勢いや、河川の水の流れを利用して水車を回し、その動力で発電機を駆動させて発電します。
2特徴
100年以上の歴史を持つ成熟した技術であり、天候による短期的な出力変動が少なく、長期間にわたって安定した電力を供給できる信頼性の高い電源です。
3課題
国内の大規模なダム開発はほぼ完了しており、建設に莫大な費用もかかることから、大型ダムの新設は難しいという現実があります。また、近年は季節による降雨量の変動が激しく、安定供給が難しくなりつつあります。
4持続可能性
今後は河川や農業用水路などを活用した中小規模の水力発電の導入が中心となりますが、生態系への影響や既設ダムの老朽化等により、発電量は減少傾向にあります。
地熱発電
1発電の仕組み
地下のマグマ溜まりによって熱せられた高温の蒸気や熱水を地面から汲み上げ、その力でタービンを回して発電する方式です。
2特徴
火山国である日本は、米国、インドネシアに次ぐ世界第3位の豊富な地熱資源量を誇ります。昼夜や天候を問わず24時間365日、安定して稼働できるため、電力系統を安定させるベースロード電源として理想的な特性を持つエネルギーです。
3課題
資源量の調査から発電所の運転開始まで10年以上の長い期間と多額の初期コストを要します。また、開発候補地の多くが国立公園内に位置するための自然環境保護に関する規制や、周辺の温泉源への影響を懸念する温泉事業者との調整が不可欠であり、地域との慎重な対話と共生が求められます。
4持続可能性
2025年2月の閣議決定により、日本の発電量全体に占める割合を23年度時点の0.3%から、40年度に1〜2%に引き上げる目標が示されています。地下に熱水がなくても発電できる「クローズドループ」と呼ぶ技術開発も進んでおり、安定供給の観点から成長が期待されています。
バイオマス発電
1発電の仕組み
木質チップ、家畜の排泄物、食品廃棄物、パーム油といった動植物由来の生物資源を直接燃焼させたり、ガス化したりしてタービンを回し発電します。
2特徴
燃料を投入することで発電するため、太陽光や風力とは異なり、天候に左右されず安定的に発電できる調整可能な電源です。また、植物を原料として使用する場合、成長過程で光合成によってCO2を吸収するため、燃焼時に排出されるCO2は相殺されると見なされ、「カーボンニュートラル」なエネルギーと位置づけられています。
3課題
太陽光や風力とは異なり燃料を供給し続ける必要がありますが、その生産・加工・輸送の過程で温室効果ガスが排出されるという課題があります。
また、食料や建材など既存の用途と燃料利用が競合する懸念もあります。そのため、真にCO2削減に寄与しているか、その持続可能性について慎重な検証が不可欠とされています。
4持続可能性
発電効率を高める「ガス化」や、廃棄物を高密度固形化する「バイオコークス」等の開発が進んでいます。将来は輸入依存を脱却し、間伐材や廃材を段階的に利用する地域循環型モデルの確立が、脱炭素化と普及の条件となります。
【未来の再エネ】将来活用可能とされる再生可能エネルギーの種類と特徴は?
2050年のカーボンニュートラルというさらに高い目標を達成するため、新たな次世代エネルギー技術の研究開発は世界中で進められています。以下に代表的な2例を解説します。
水素エネルギー
太陽光や風力発電の最大の弱点は、天候による出力変動と、それに対応するための「システムコスト」です。水素エネルギーを使用した発電方法では、天候や環境の影響を受けないという点が最大のメリットです。特に、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して製造する「グリーン水素」は、製造から利用までCO2を排出しないという特徴があります。
水素は気体や液体として貯蔵・輸送が可能であり、変動する再エネの余剰電力を水素に変えて貯蔵し、電力が必要な時に燃料電池で発電したり、燃料として利用したりすることで、エネルギーシステム全体の安定化に大きく貢献する究極のクリーンエネルギーとして期待されています。
海洋エネルギー
四方を海に囲まれた日本にとって大きなポテンシャルを持つのが海洋エネルギーです。現在、海洋エネルギー発電には主に3つの発電方法があります。
【波力発電】は、波の上下運動を利用する発電方法で、波の上下運動で空気を圧縮してタービンを回したり、可動物体を動かしたりして発電します。
【潮力発電】は、月の引力などによって起こる潮の満ち引きによる海水の流れを利用する方式で、大きく「潮汐力発電(ダム式)」と「潮流発電(水車式)」の2種類があります。
【海洋温度差発電】は、海の表層と深層の温度差を利用して発電します。沸点の低い作動流体(アンモニアなど)を温水で蒸発させてタービンを回し、冷水で液化させるサイクルを繰り返し、安定的に電力を生み出します。
これらが実用化されれば、日本の地理的優位性を活かした新たな国産エネルギー源となる可能性があり、期待と注目を集めている発電方法です。
事業としての再生可能エネルギー
電力の固定価格買取制度(FIT)の買取期間が終了するにつれて売電の恩恵が減少する一方で、再生可能エネルギーは自家発電自家消費型モデルへの転換が加速しています。
オフグリッドラボのSOLERIO(ソレリオ)は、「太陽光発電と蓄電池を組み合わせたハイブリッドシステム」です。このサービスは、集合住宅や公共施設、医療・介護施設などを対象に、エネルギーの自家発電・自家消費を実現・促進するため事業として展開しています。
SOLERIOの低圧一括受電モデルは、電気代を削減するだけでなく、災害時に事業や生活を継続できるBCP(事業継続計画)対策としても機能し、環境負荷を低減します。